【13 夜祭りの儀式】


遠くで雷鳴が響いた――。


キラリと光る稲妻が、山の輪郭を一瞬浮かび上がらせる。


今にも、雨が降り出しそうな夜の道を、茜は歩いていた。


儀式用の、まるで昔の白装束のような、純白の着物を着せられた茜の先を行くのは上総と、男子禁制だという儀式の席まで茜を案内する、『お付き』の中年の女性が二人。


足下を照らす明かりは、お付きの持つロウソクの頼りない炎だけだった。


茜の後ろには、敬悟がぴったりと寄り添うように歩いて行く。


「こ、こんな天気で、外でお祭りをやるの?」
 

得体の知れない『夜祭りの儀式』とやらに不安いっぱいの茜は、何とか気持ちを引き立たせようと、どうでも良いような話題を振った。


「祭りと言っても、一般の祭りめいたことをやる訳ではないですし、茜様の行かれる儀式の席上は、洞窟の中ですから、例え嵐になっても心配いりませんよ」


笑いを含んだ声で、上総が答える。


何気なく振った質問の答えに、茜はぎょっとなった。
 

「ど、洞窟ぅ!? 洞窟の中に入るの?」
 

まるで死に装束のような着物を着て、ロウソクの明かり一本で真っ暗な洞窟に入って、どんな儀式をやるって言うんだろう?


茜は、背筋を嫌な汗が流れるのを感じた。