否定して欲しいと必死に掴んだ茜の手は、静かに外された。


そして、覗き込んだ瞳に映ったのは、赤く禍々しく光る双眸――。


あれは、紛れもなく『鬼』の眼だ。


『何があっても、俺は、お前の味方だ。それを忘れるな』


敬悟の言葉が、茜の胸を過ぎる。


何があっても?


味方?


誰が、誰の味方?


『茜ちゃん、大丈夫だよ。僕がいつも側にいるからね……』 


遠い幼い日から絶え間なく注がれていた、優しい眼差し。


いつだって自分の味方だった大好きな従兄。


――あれが、全部偽りのものだったの?


茜は、抱えた膝に顔を埋めたまま、叫び出したい衝動をじっとこらえていた。