どれくらいの時間が経ったのだろうか。 とうに日も沈み、広過ぎる和室は薄闇の中、静寂に包まれていた。 一人部屋に残された茜は部屋の隅で膝を抱え、そこに顔を埋めて、上総の言った言葉をひたすら反芻していた。 『その男は、貴方を助けてはくれませんよ』 ――うそ。 『本当の神津敬悟は、十六年前の事故で母親と共に死んでいます』 ――うそだ。 『ああ、貴方の親友の高田真希。彼女を鬼人化させたのは、彼ですよ』 ――うそだよ!