鬼押村を後にした茜と敬悟は、傷を負った信司を家まで送り届けるために、一度車で関東まで戻った。
『鬼隠れの里』に関する手がかりが分かったら、必ず連絡をすると信司と約束を交わし、自分たちはそのまま東京に出て新幹線で南下した。
目的地は、広島。
正確には、広島にある離島『鬼珂島(くがじま)』
瀬戸内海に浮かぶ総面積5キロほどのこの離島は、『桃太郎伝説』が残る、全国各地に数多く存在する『鬼ヶ島』の一つだった。
ここに、『鬼隠れの里』への『入り口』がある。
それは、玄鬼が茜に見せたあの父と母が出会った『鬼隠れの里』の一件から、敬悟が導き出した答えだった。
『明日香』が茜くらいの年頃。
つまり15~20年くらい前に、『神津衛』が遺跡発掘で洞窟の落盤事故に見舞われた場所。
それを特定するするのは、実にたやすい事だった。
実際、敬悟は途中で寄ったネットカフェで、その情報を数分で探し当てたのだ。
信司と別れたときには既にこの情報を得ていたが、敢えて黙っていた。
話せば一緒に行くと言うのが目に見えていたし、何より、これ以上第三者を巻き込む訳にはいかなかった。
これから先は、どんな危険が待っているか分からないのだ。