気が付くと、茜は何もない白い空間に佇んでいた。
「茜――」
聞き覚えのある声に振り返ると、そこには声の主、人型の玄鬼が立っていた。
その表情は、今まで見たことが無いほど穏やかで、逆に茜をどうしようもなく不安にさせた。
「玄鬼……」
色々な想いが茜の中で交錯する。
「見てきたか?」
「え?」
「その石が生まれた訳を」
「……うん」
茜は、胸のペンダントをそっと握った。
ほのかに温かい。
これは、白鬼……玄鬼の妹の最後の命の炎。
叶わなかった、切ない片恋の忘れ形見。
「あの後、どうなったの?」
「今、お前がここに居る。それが答えだろう?」
茜は、こくんと頷いた。
玄鬼の言う通り、茜はここにいる。
明日香と衛は、無事に赤鬼の手から逃れ鬼隠れの里を脱出できた。
その確かな証拠が、茜自身の存在だった。



