恫喝に近い赤鬼の怒声に、玄鬼は口の端を上げた。
そこに大きい犬歯が覗く。
一連の出来事を、どうすることも出来ずに、横たわる白鬼の中で見ていた茜は、玄鬼の犬歯が『ずん』と大きさを増したように感じた。
玄鬼の眼に、鋭い光が宿る。
その輪郭がぶれて行く。
みしり、みしり――。
ぼきぼきぼき――ごきり。
骨が歪む音が不気味に響き渡る。
筋肉が膨れ上がり、隆起する。
そして、めりめりと音をたてて、その頭上に、一本の角が生えた。
そこに現れたのは、金色の瞳を持った山のように巨大な黒い鬼。
――そ……んな。
茜は我が目を疑った。
見知った者が、異形の者に変化を遂げる恐怖。
それよりも、驚きの方が勝った。
目の前で、赤鬼と対峙している黒い大きな鬼。
それは、『鬼押神社』で茜たちを襲った、あの大鬼だったのだ。



