「私は、何処にも行かない。ずっとここにいるから、お願い。彼を帰してあげて」
腕の中の華奢な少女に、赤鬼は訝しげな視線を向ける。
「何故だ? 解せぬな。なぜ、あんな人間にそこまで執着する?」
「……あなたには、分かるはずよ、赤鬼。一度でも人間を愛したことがある、あなたなら」
「分からぬな」
赤鬼は、明日香を地面に横たえると、そのまま衛の元へ足を向けた。
その行動が何を意味するのか、その場にいた誰もが理解していた。
「それぐらいにしたらどうだ、赤鬼。暴走が過ぎやしないか?」
赤鬼と衛の間に玄鬼が立ちはだかるが、その顔色はまだ彼本来のものではない。
赤鬼が、ぎろりと玄鬼を睨め付ける。
「懲りていないのか? 我が配下の者とて、逆らえば容赦はせぬぞ」
「はっ! そんなの、先刻承知。いったい何年あんたの手下をやっていると思うんだ?」
「では、そこを退け」
「嫌だね」
「玄鬼、これは命令ぞ。そこを退け!」



