ありふれた日常の風景の中で、明らかに『そこ』だけが異質だった。
岬の切り立った崖に、ぽっかり空いた大きな洞窟。
入り口には小さな赤い鳥居が、ポツリと立っている。
渡されたしめ縄が、海風になぶられて激しく揺れていた。
白鬼と衛がそこに着いたとき、鳥居の下で片膝を付いて洞窟を睨んでいる人物がいた。
浅黒い肌。
長めの黒髪。
少しつり加減な、大きな黒い瞳。
精悍な顔立ちの青年は、人型の玄鬼だ。
脇腹から左足にかけて、出血しているらしく、濃紺の作務衣が黒く濡れている。
白鬼は、慌てて駆け寄った。
「兄さん! 何があったの!?」
「油断した。まさか、赤鬼が、ここまで苛烈に反応するとは思わなかった……」
玄鬼の顔が苦痛で歪む。
「ちょっと傷を見せて」
「つっ」
脇腹の傷はかなり深い。人間なら、とうの昔に失血死していてもおかしくはない。
白鬼は迷わず、兄の傷に手をかざした。



