何の変哲もない、のんびりとした田舎町の風景。
でも、歩くほど張り詰めていく重い空気は、痛いくらいに心と体に突き刺さる。
膨らんでいく恐怖心は、茜と、そして白鬼のものでもあった。
たどり着いたのは、大きな日本家屋だった。
家と言うよりもはや『お屋敷』と呼ぶにふさわしいその重厚な門構えに茜は、修学旅行で見学した武家屋敷を思い出した。
家の周りをぐるりと囲う板塀。
その中心にある茅葺きの大きな棟門をくぐり、手入れの行き届いた庭木の間をしばらく歩くとやっと玄関に到着する。
玄関には、顔色を無くして腰を抜かしたように座り込んだ家人の女性がいた。
「何があったの? 明日香が戻ってきたでしょう? 兄さんは、玄鬼は何処にいるの?」
「白鬼さま! そ、それがっ……」
ただならぬ雰囲気に、白鬼は矢継ぎ早に質問を浴びせかける。女性は、堰(せき)を切ったようにしゃべり出した。



