「……その右足、今、無理に動かしたら一生引きずりますよ? それでも行くんですか?」
「はい」
白鬼の精いっぱいの制止の言葉に、衛はそれまでと変わらない穏やかな笑みを浮かべる。
ふう。
白鬼は己の想いを吐き出すように大きなため息を一つついて衛の前に跪くと、右大腿部に手のひらをかざした。
そのまま目を閉じて、静かに念じる。
傷つき壊れた細胞の一つ一つをつなぎ合わせ、再生する。
その作業は、膨大な量の精神エネルギーを消費してしまう。
極端な精神エネルギーの損失は、彼ら鬼の一族にとっては致命的で、悪くすれば肉体の崩壊を招く恐れがあった。
だからこそ、毎日少しずつ時間を分けて治療をしてきたのだ。
既に今日は治療が済んでいる。
これ以上は完全に許容外だったが、それでも白鬼は治療を続けた。
――彼女に出来ることは、それしかなかったから。
――行かないで。
――ここにいて。
白鬼の心とシンクロしている状態の茜は、その切ない思いに、胸が痛んだ。



