布団の上に横たわった浴衣の下の父の体は、正に満身創痍状態で、目にした茜は思わず息を呑んだ。
白鬼の治療で大分状態は良くなっているが、体全体に広がる無惨な傷跡は、命の危機にあったことを容易に窺わせる。
特に右足が酷く、大腿部にぐるりと残る傷跡が生々しい。
茜は、白鬼の力を使って衛を丁寧に治療した。
治療と言っても、『治れ』と念じるだけだったが、衛の顔色が良くなった所を見ると、効果はあったようだ。
「ありがとう、おちびさん」
治療が済んだ後、衛はそう言って白鬼の頭を優しく撫でた。
気持ちよさに、思わず喉がゴロゴロと鳴る。
傍らにいた玄鬼がそれを見て、不機嫌に鼻を鳴らす。
「今日は、とても良いお天気ですよ。少し、外をお散歩しましょうか?」
明日香が甲斐甲斐しく衛の身繕いに手を貸しながら、そう提案した。
仲むつまじく、寄り添いながら庭を散策する二人が惹かれあっていることは、茜にも一目瞭然だった。
玄鬼の話を聞く限りでは、二人は出会ってまだ二週間の筈だが、人が惹かれ合う度合いは、流れる時間の長さとは関係がないらしい。
仲の良い両親の姿を目で追いながら茜は、同じく傍らで二人の姿を面白くなさそうに見詰めている玄鬼に、全てを打ち明けて助けを乞う事を決意した。
こうしている間も、敬悟と信司は危機に瀕しているのだ。
玄鬼なら、きっと助けてくれる――。
そんな確信めいたものが、茜の中に存在した。
「あの、玄――」
声を掛けようとした茜は、背筋を這い上がってきた強烈な感覚に、全身が総毛立った。



