結界の中の建物は、外から見た時と何ら変わりがなかった。
だが、大きな違いは生活感があることだ。
そこに、人の暮らしている気配がする。
茜は、明日香と玄鬼の後を付いていきながら、キョロキョロと周りを見渡した。
昔ながらの農家造りの建物は、思いの外手入れがされていて清潔だった。
広い土間のある玄関に入り、広い縁側を部屋三つ分奥に進んだところ。
そこで、明日香が膝をつい、障子の向こうに声を掛けた。
「衛さん。明日香です」
相手も来る頃合いだと待っていたのか、すぐに返事が来た。
「はい。どうぞ」
聞き慣れた穏やかな声が、茜の耳に心地よく響く。
静かに障子を開けると、明日香は嬉しそうな笑みを浮かべた。
「お加減は、どうですか?」
「ええ。今日は痛みも無いし、大分良いです。その、不思議なおちびさんのおかげですね」
明日香の問いに、布団の上で半身を起こした青年は、柔らかい笑みを浮かべる。
「こんにちは。おちびさんたち」
布団の上に座って、白黒兄妹子猫を見詰める理知的な瞳をした優しそうな青年。
それは間違いなく、茜の父・神津衛だった。



