「お……兄さん?」
「なんだ妹よ」
「……」
白黒子猫コンビが兄妹の絆を確かめ合っているうちに、一行は目的地に到着した。
林の奥にひっそりと隠れるように建つ大きな屋敷は、空き家というよりは廃屋に近かった。
当たり前だが、人の気配は全くない。
先頭を歩いていた明日香は、建物の玄関の前で立ち止まると、スッと両手を頭の上にかざした。
手のひらを建物に向けて、精神を統一するように静かに目を瞑り、口のなかで何か呪文のようなものを唱える。
別に変化は無い。
が、茜はそれが結界を解いているのだと分かった。
もしかしたら、白鬼本来の記憶が、茜に知識を伝えているのかもしれない。
茜はそう思った。
「さあ、行きましょう」
『ここに来るのが嬉しくてしょうがない』
明日香が、そんな笑顔を浮かべて、建物へと入っていく。
玄鬼と、茜の心が入った白鬼がその後を追って、結界の中へと足を踏み入れた。



