愕然とする茜の耳に、鬼の非情な声が届く。
『聞かぬか……。ならば――』
鬼が、足下に横たわる一人の首に手を掛けて、片手で無造作に掴み上げた。
「橘くんっ!」
信司は、ぴくりとも動かない。
だた鬼の成すがままに、力無くぶら下がっている。
「やめて! お願いだから、橘君を放して!」
ゴキリ――。
茜は、自分の叫び声に重なって響く、骨の砕ける鈍い音を聞いた。
そ……んな。
そんな、ばかなこと、起こるわけ、ない。
「だ……め」
震える声が、喉から絞り出される。
『次は、こやつか』
ゴトリ。
信司の体を投げ捨てると、鬼は、次の獲物へ、敬悟へと手を伸ばした。



