力無く横たわる二人の名を呼び駆け寄ろうとするが、何かの力に阻まれて進めない。
「な……に、これ……っ」
鋭い破裂音を上げて、放射状に広がった青い炎が茜を押し戻す。
渾身の力を込めているのに、靴底が後ろにずるずると滑って行く。
『去れ、人間の娘よ。今なら、その無謀な勇気に免じて見逃してやろう。だが、あくまでも我に逆らうならば――』
再び張り詰める空気に、茜は一瞬ひるんだ。
『お前も、こやつらと共に、喰ろうてくれるわ』
喰らう――。
鬼が、人を喰らう――。
冗談じゃ、ない。
こんな所で、訳のわからない鬼になんか、食べられてたまるもんですか!
茜は、胸のペンダントの石を、ぎゅっと右手に握り込んだ。
ヒンヤリとした冷たい感触が、手のひらに伝わる。
――お願い、力を貸して。
敬にぃと、橘君を助けて。
一心に、願いを込める。
すると、微かに石が熱を帯びてきたような気がした。
いける!?
力を、コントロール出来る!?
希望の光が射したかに思えた。
だが、そこまでだった。
それ以上、なんの変化も起こらない。
ほのかに熱を帯びた石が、緊張と寒さで冷たくなった茜の手の平を温めただけだ。
そんな……。



