何も出来ないかもしれない。
いまだに、何なのかさえ分からない『守りの石』と、それをコントロール出来ない不安定な自分の力。
茜にはそれしかない。
怖いし、自信なんか無い。
それでも、この中には大切な人たちが居る。
捕らわれている。
「私、行くよ」
茜は、決意を込めてきっぱりと言った。
単なる監視者だと言いつつも、いつも助けてくれる小さな子猫。
感謝こそすれ、恨むわけなどない。
「ここまで、ありがとう玄鬼――」
茜は、子猫の玄鬼を抱き上げると、その鼻に自分の鼻をコツンとくっつけた。
そしてそっと玄鬼を地面に下ろすと、踵を返し鳥居の中へと足を踏み入れる。
だが、鳥居を抜けた筈の茜の姿は、鳥居の向こう側には現れなかった。
後に残るのは、ただ静かに佇む赤い鳥居と、そこにちょこんと座る黒い子猫。
金色の瞳が、遠くを見るように細められる。
浮かぶのは、憧憬と悔恨の色。
「ったく、嫌になるくらい良く似てやがる……」
その子猫の呟きを聞くものは、誰も居なかった。



