幾分欠け始めた、青白い月灯りの下、茜は玄鬼の後を追って懸命に走った。
棚田のあぜ道を抜け、小さな林を駆け抜ける。
上がる息の下、揺れる茜の視界にやがて入ってきたのは、この村に着いた日に訪れた『鬼神さま』を奉っている『鬼押神社』のある大きな森だった。
黒々とした木々の間。
赤い鳥居が、月の光に照らし出されて、ポツリと浮かび上がっている。
「ここじゃ。この中に敬悟と信司は捕らえられておる」
鳥居の前で、玄鬼が立ち止まった。
「こ……こに?」
「ああ、間違いない」
夜の神社は、暗い森の懐に抱かれて静かに佇んでいる。
その闇の深さに、茜は身震いした。
――怖い。
闇の深淵。
そこに潜む得体の知れないモノへの恐怖。
それは、幼い頃から茜が感じていたものだ。
「ワシは、これより先には入れぬ。何があっても、助けてやることは出来ぬぞ? それでも行くのか、茜?」
浮かび上がる玄鬼の瞳に宿る、厳しい光。
それは、その言葉が真実であることを茜に教えた。



