最悪!
よりにもよってこんな日に、「ドジ」の本領を発揮なんて!
どうしておしとやかな所が、お母さんに似なかったんだろう!?
と要らぬ心配をしながら水たまりに尻餅を付くのを覚悟した瞬間、落下運動がピタリと止まった。
「あ、あれ?」
お尻が冷たくないぞ?
ゆっくり視線をあげると、見慣れた顔が自分を見詰めている。
細身の長身。
はっきりした二重の黒い瞳には、安堵の色が見えた。
通った鼻筋に引き締まった口元。
およそ同じ血が混じっているとは思えない、整った顔立ちをした喪服姿の青年に、茜は抱きかかえられていた。
青年の名は、神津敬悟(かみつけいご)。
茜より四歳年上の父方の従兄だ。



