茜は、部屋の中に足を踏み入れた瞬間、目を疑った。
なに……これ?
あのアパートの外観から言って、6畳2間くらいがせいぜいのはずだ。
なのに、目の前には、アパート全体が余裕で収まってしまいそうな、広大な空間が広がっていた。
黒光りする大理石のような、床と壁。
窓や光源は無いのに、何故か明るい無機質な空間。
その中心に、やはり同じ石で出来た椅子がポツンと置かれていた。
まるで『玉座』のように――。
少年の鬼は、大きすぎる玉座に座ると、『さあ、どうぞ』と茜を隣に誘った。
すると、何も無かった空間に、同じ玉座が忽然と現れた。
逆らう術もなく、茜は鬼の隣に腰を下ろす。
「あなた、赤鬼(シャッキ)の仲間なの?」
今回は、鬼志茂の時のように、助けてくれる玄鬼は居ない。
自分が何とかしなければ、ここから出られない。
唯一自由になるのは、言葉だけ。
なら、それを行使して、なんとかこの状況から脱出しなければ。



