「さあ、お姉ちゃん、お部屋に入ろうよ」
ゆっくりと動く少年の赤い唇を、茜は、恐怖の眼差しで見つめた。
さすがの茜も、目の前に居るモノが人間の少年では無いことが分かった。
姿は少年のまま、変わりはない。
だがこれは、少年のヒトガタを纏った得体しれない化け物だ。
その小さな体から立ち上る禍々しいオーラには、見覚えがあった。
一番最初に茜を襲った『赤鬼』
あの時に感じたと同じくらいの圧倒的な力と恐怖を、今、茜は肌で感じていた。
「部屋に入るって……鍵は、落としたんでしょう?」
思わず語尾が震える。
「そんなの」
クスクス。
「おびき出すための、嘘に決まっているじゃないか」
愉快そうに、鬼が笑う。
「さあ、どうぞ。僕のお家へ」
「あ……」
行くまいと思うのに、体が言うことをきかない。
茜は鬼に導かれるまま、ふらふらと部屋の中へと入っていった。



