仲の良いこの兄妹は、茜に幼い頃のことを思い出させた。
そう言えば、いつもこんな風に敬にぃに手を繋いで貰っていたっけ――。
母の明日香は、入院がちでほとんど家にはいない。
父の衛も、遺跡の発掘に出かけると何週間も家には帰ってこない。
確かに世話をしてくれる家政婦はいた。
それでも、夜、ふと目が覚めてしまった時。
闇が無性に怖くて、どうしようも無くなって、一人で良くベッドの中で震えながら泣いていた。
そんな時は、決まって敬悟が来てくれた。
「大丈夫だから、お休み。僕がいるから、大丈夫」
そう言って、眠りにつくまで手を繋いでくれていた、4つ年上の優しい従兄。
幼い茜にとって、その手は唯一でかけがえの無いものだった。
今は少し大人に近付いた分、複雑怪奇な感情が邪魔をして素直になれないでいるが、たぶん、それは今も変わらないものだ。



