「お家の鍵を、落としちゃった……」
お兄ちゃんが困ったように、そう言って口をとがらせる。
黒い大きな瞳にたまった涙が、今にもこぼれ落ちそうになっていた。
「え? 鍵が無くなっちゃったの?」
茜は、子供達にぶつからないように注意しながらドアを開け、車から降りた。
無理矢理足下に放り出された玄鬼が、迷惑そうに『ウニャン』と不平の鳴き声を上げるが、この際無視する。
茜は、子供達の視線に合わせてしゃがむと、『ん?』とお兄ちゃんの顔を覗き込んだ。
「鍵が無いと、お家に入れないよ……」
よほど心細かったのか、少年の滑らかな頬を、大粒の涙がポロポロと伝い落ちる。
それにつられるように、妹の方もシクシク泣き出した。
「お姉ちゃん、捜し物得意なんだ。一緒に、鍵を探そうか」
「よせよせ。下手なことに、関わらぬ方が良いぞ」
足下で、毛繕いをしながらチャチャを入れる玄鬼に素早く睨みをきかせる。
「さあ、どこを歩いて来たのかな? きっとそのどこかに、鍵は落ちているはずだよ」
茜は、親指で少年の頬を拭い、幼い兄妹にニッコリと笑いかけた。



