鬼志茂での一件を、茜は敬悟にありのまま伝えた。
鬼志茂神社の鳥居をくぐった瞬間に、鬼女伝説の舞台である江戸時代に飛ばされたこと。
雑誌記者・佐伯麗香と同じ魂を持つ鬼女『お香』との戦い。
そこで自分が『守りの石』の力を使ったらしいこと。
そして、人型の玄鬼に助けられたことも全て。
たとえば、あれが熱射病で倒れている間に見た夢だと考えることもできる。
もしも、玄鬼という同行者が居なかったら、茜自信もそう思っていたかもしれない。
だが、現実に玄鬼と茜の話は完全に一致していた。
話を聞き終えた敬悟は少し考え込んでいたが、さして特別何も言わなかった。
「あれ? そう言えば橘君は?」
ずっとバイクで付いてきていた橘信司の姿が、バイクもろとも見えない。
さすがに疲れて帰ったのだろうか。
「帰れと言っても無駄そうだから、仕事を頼んだんだ」
「仕事?」
苦笑いする敬悟の言葉に、茜は首をかしげる。
「ああ。佐伯さんに教えて貰った『例の投書の事件』について資料収集をしに、図書館に行って貰った」
「へぇ」
バリバリ体育会系の橘信司と図書館で情報収集。
似合わない組み合わせに、茜はちょっと笑ってしまった。



