もう七月だと言うのに、季節が逆行してしまったかのような冷たい雨。


火葬場の煙突から上がる黒い煙は、そのけぶるような雨の中、鉛色の空に溶けるように消えて行く――。


空も、失われた命を悼んでいるかのようだった。


一人、親戚一同が詰めている待合室を離れ、玄関ポーチの外壁にもたれて、落ちてくる雨をぼんやりと眺めていた神津茜(かみつあかね)は、肌寒さに震えが走り、思わず自分をギュっと抱きしめた。


半袖のブラウスから出た剥き出しの自分素肌は、ヒンヤリと冷たく感じる。


お母さん……。


心の中で母に呼びかけて、ふうっと大きな溜息をつく。


体の弱かった母・明日香が、亡くなったのだ。