「お帰りなさい……」
すぐ耳もとで、声が聞こえて茜は固まった。
でも、お香は先ほどと同じ場所で、微笑みをたたえて佇んでいる。
「夕げの用意ができていますよ」
お香の曼珠沙華の花のような赤い唇が、ゆっくりと言葉を紡ぎ出す。
「さあ、いらっしゃい」
お香の白い腕が、『おいでおいで』と手招きをする。
赤と白の乱舞――。
「いらっしゃい」
茜は、それに引かれるように、ふらふらと歩き出した。
「しっかりせんか! 取って喰われたいのか茜!」
「きゃっ!?」
すかさず玄鬼に引き戻されて、茜は我に返った。
「なぜ、来ませぬ?」
「行かぬ。我らは、ぬしの贄ではないからな!」
玄鬼が、鋭く言い放った。



