夜半。
茜は、ボソボソという人の話し声で目を覚ました。
明かりの無い部屋の中は、真っ暗だ。
障子の向こう側には、庭木の陰がゆらゆらと揺れている。
どうやら、外は月夜で明るいようだ。
うっ、寒っ。
トイレに行きたいなぁ。
昼間はそうでもなかったが、夜は結構冷え込んで寒い。
茜は身震いをして、布団を抜け出した。
玄鬼は、部屋の隅でごろりと横になったまま寝入っている。
縁側との境の障子を静かに開けると、そこには幻想的な世界が広がっていた。
暗い夜空に、ぽっかりと浮かんだ白い満月。
その煌々とした光に照らされた稲穂が、風に吹かれてさわさわと揺れている。
乱舞する蛍の群れが、満天の星と混じりあう。
それは、現代では見ることができなくなった、どこか懐かしい風景――。
うわぁ、綺麗……。
じゃなくて、トイレトイレ。
茜は、月明かりの下、昼間の記憶を頼りにトイレに向かった。



