「もうっ玄鬼ってば、肝心な時に頼りにならないんだから!」
食事がすみ部屋に戻った茜は、満腹で幸せそうな玄鬼に文句をたれた。
「勘違いをするな。俺はお前の子守りではなく、ただの監視者だ。何故お前に頼りにされねばならん?」
「そ、それは……」
もっともな玄鬼のセリフに、茜は言葉が続かない。
でも、少しぐらい助けてくれたっていいじゃない、このどケチ猫マタ!
思わず心の中で毒づくと、玄鬼が形のいいアーモンド型の瞳を細めて、ちらりと流し目をした。
「聞こえているぞ。少しぐらいは助けてやろうと思ったが、やーめた」
そう言うと、ごろりと横になって茜に背中を向けてしまった。
猫型でも人型でも口調が変わるだけで、さほど習性に違いはないようだ。
「ちょ、ちょっと! 私が元の世界に戻れなかったら、鬼隠れの里にも行けないよ! そしたらこの石も返しに行けない。それじゃ困るんじゃないの!?」
「俺は、別に困らん」
「そ、そんなぁ……」
『取り付く島もない』とはこのことだ。
どうすれば元の世界に、敬悟のいる現代に戻れるのだろう?
石に祈ったら、戻れるとか?
胸のペンダントを握りしめて念じてみる。
が、しかし、何の変化もみられない。
ああ、前途多難……。
茜は、特大のため息をついてうなだれた。



