その時、あたしは先輩に恋をしたんだ。


あたしに触れる手があまりにも優しくて、こんな人もいるんだ…と心打たれてしまった。



バンドを組んでるから

ギターが弾けるから

芸能人だから


…あたしが好きなのは、そんな所ではない。



先輩の、心が好きなの。



偽善でも何でもない。

あたしは、先輩のその優しく温かい心に恋をしたんだ。




「風、気持ちいい…」




頬に当たる、少し冷たい風に気持ちが少しずつ落ち着いていく。



…先輩はきっと、あたしの見えない所で頑張ってるんだ。


あたしの、手の届かない場所で。




瞳を閉じた目元からは、キラリと光るものが流れ落ちていった。




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