ソファーの向こう側に
父、母、姉。
あたしの隣には、柚。
お父さんは終始
にこにこ笑っていて、
お母さんは無表情で
淡々とおもてなしの準備中。
お姉ちゃんは
にやにやしている。


お湯が沸いたらしく、
お母さんが紅茶の準備を始めた。
ショートケーキも出てきている。
どれも柚の体には悪い。
「紅茶でいいかしら?」
というので、
「あ、柚は…」と、
言いかけたら、
柚が袖を引っ張って
首を振った。


そうだ。
今紅茶が飲めない理由を話せば、
一気にあの頃の話になってしまう。
空気は悪くなるだろう。
『…俺が我慢すればいいから。』と、
耳元で言ってくれたけれど…
不安だった。