昔の事を思い出した。

俺は煙草のケースを出して、バイクに寄りかかりながら火をつける。

「…いりますか?」

「いらない。」

総長は煙草を吸わないようになった。

「なんか、皐月に初めて会った時。すごい面倒くさそうな目で見られたのを思い出した。」

笑う。

その笑顔は、もう影も感じない。

「…そうですか。」

少し図星なうえに、禁句の“ガキ”やら“背丈のない”と思ってた俺。

出会った時の話は、しないでおこう。

この日を境に、俺は総長と出会った時の話は絶対にしないと決めた。





闇に埋もれる黒
END.