怒りか絶望か、感情が収まっていないヤエは誰だろうと牙を向く。

「帰るよ、馬鹿。」

「足んねぇ。」

「だったら死ね。」

そして地獄に落ちりゃ良いよ。

肩を竦めると、見知ったブラウン系の長い髪の女が見えた。

背が小さい蝶々。

北街じゃ有名な総長で、暴走族恐界連合の頭脳だとか。

ここじゃあそんな事は関係ないんだけど。

自分の縄張りを出れば、誰だってただの人間でしかない。

地位や家柄、そんなの全部取り払って還元したもの。

それが“人”

「あんたのところの狂蛇は元気?」

皮肉まじりに笑ってやった。