隣でずっと指輪を選んでいる。

俺は殆ど飽きてきて、紅乃の表情を見ていた。

1つの指輪に一喜一憂とは、大変なこった。

「…また今度にする」

そうして、一昨日と同じ台詞を吐く。

気に入らないのか、俺に遠慮してるのか。

「また?」

「また、って。欲しいのないし、試着だけで幸せになれるし」

どんだけ貧乏性なんだよ。

「好きなの選べばいいじゃねぇかよ?」

ショーケースを前に、言い合いを始める俺等を店員が慌てる。

「だから、いらない」
「買え」
「千晴が好きなの選べば良いじゃない」
「それだと意味ないだろうが」