魔性の女が。

「…そうだよ」

馬鹿みたいに目を逸らしながら答えた。

「え?何?」

「……そうです」

「なんて言ったの?」

こいつ。

遊んでやがる。

「なーんーてー言ー」

口を塞ぐ。

滅茶苦茶にしてしまいたい衝動に駆られる。

「…ん…と、も」

「そうだっつってんの」

酸欠の美夜に言う。

朝になったら、忘れてると思うから今のうち。

「そっかぁ…良かった」

ニコニコと笑う顔に翻弄される。

その夜は久しぶりに主導権を握られた気がした。