ありきたりな映画のようにそんな事が出来るわけがなく。

俺は腕時計を見ながら、イライラしていた。

もう九時。

きっと芙柚の行きたいと言っていた店も閉まっていると思う。

…芙柚、ごめん。

「大変長らくお待たせいたしました…」

アナウンスが入る。

電車がやっと動き出した。







着いたのはもう十時。

田舎なだけあって、殆ど人がいない駅。

俺は居ないであって欲しい芙柚の姿を探した。

「…こーしろー?」

間延びした声が小さく聞こえて振り返る。

「…芙、柚」

「びっくりしたー。全然来ないんだもん?」

「ごめん。本当にごめんな?」

俺の謝罪に、“しょうがないなぁ”という顔をして、芙柚は笑った。