「どうしました。心の準備でもしますか?」

「そうじゃない。一つめということは、僕は幾つもの失敗をやらかしたのかい?」

「そんなとこです」

そんな身もフタもないことをと思ったが、相手はその名を知られた探偵である。

木村は覚悟を決めた。

「わかった月見くん。聞かせてくれ」

達郎は再びメモに目を落とした。

「まず帰りに花束を買った事ですね」

「花束を買ったのがまずかったのかい?」

「花束を買ったこと自体は別にいいんですが、問題は買った場所です」

「場所?」

「花束にクリスマスカードがついてたんですよね。営業のために店名や住所、電話番号は書いてありませんでしたか?」

「…書いてあったような気がする…」

「それはまずいですね」

「え、でも…」

「キャバクラがあるような場所には当然、奥さんは行かないでしょう。見慣れない、聞き慣れない店名や住所を目にしたら、怪しむのは当然です」

木村が買ってきたのは単なるバラの花束。