月と太陽の事件簿11/愛はどうだ

「葉野くんが『先生のお気に入り』な理由がわかったかい」

「失礼な質問をしてすみませんでした」

達郎は頭を下げた。

「いいさ」

教授は手を振った。

「それに彼女にも悪い事をした…」

「先生?」

「いや、なんでもない」

それよりも、と緒方教授は身を乗り出した。

「なぜ月見くんは葉野くんの依頼を引き受けたんだい?」

「先ほど答えた通りですが…」

「それは違うだろう?」

教授は首を振った。

「葉野くんが君のお母さんに似ていたからじゃないのかね?」

「…なぜ、それを?」

達郎は動揺を隠さなかった。

否、隠せなかった。

「僕は若い時の君のお母さんを知っている。ただそれだけのことさ」

言われてみればそうだった。

達郎が物心ついた時、すでに母は今の亜季より年上だった。

しかし高校卒業して付き合いの途絶えた緒方教授にしてみれば、母のイメージは若い頃の姿そのままなのだ。