月と太陽の事件簿11/愛はどうだ

冷や汗をかいたり、頬を震わせたりといった様子はない。

動揺で顔が青ざめたりもしなかった。

正確に例えると、熟考とか、思索とかいう言葉が当てはまる気がした。

やがて教授は腕組みを解いて口を開いた。

「それで月見くんは葉野くんに何を頼まれたのかね」

「この手紙の差出人を見つけてほしいと言われました」

「見つけた後は?」

「それなりの忠告をするつもりです」

「君は葉野くんとは知り合いだったのかい?」

「今日が初対面です」

「それにしてはずいぶん親切だね」

「人として当然のことをしているだけです」

達郎は自分の発言に白々しさを感じたが、本当のことは言えなかった。

「先生に心あたりはありますか」

「残念だが無いね」

「先生自身に心あたりはありませんか」

「…それは僕が葉野くんに特別な感情を持ってやしないかということだね?」

「失礼なことを訊いて申し訳ありません」