身内を担ぎ出すのは達郎の好むところではない。
相手が亜季でなかったら言わなかっただろう。
「気を使って頂いてありがとうございます」
そう言って亜季は笑顔で頭を下げた。
「もうひとつ訊いておきたいのですが」
「なんでしょうか」
「緒方先生の事ですが」
「先生がなにか?」
「先生になにか問題はありませんか」
「それはどういう意味ですか?」
「緒方先生が貴女に何かしてこなかったかということです」
「先生はそんな人ではありません」
亜季は伏し目がちになって言った。
「それに先生には…」
亜季は何かを言いかけて口ごもった。
その様子には明らかに逡巡の色があった。
「言いたくないことがあるなら構いません」
達郎は相手を気遣って言ったつもりだったが、亜季は首を振りながら顔をあげた。
「…月見さん、これは内密にしてもらえますか」
亜季の黒目がちな瞳が達郎を見つめる。
達郎は沈黙を誓った。
相手が亜季でなかったら言わなかっただろう。
「気を使って頂いてありがとうございます」
そう言って亜季は笑顔で頭を下げた。
「もうひとつ訊いておきたいのですが」
「なんでしょうか」
「緒方先生の事ですが」
「先生がなにか?」
「先生になにか問題はありませんか」
「それはどういう意味ですか?」
「緒方先生が貴女に何かしてこなかったかということです」
「先生はそんな人ではありません」
亜季は伏し目がちになって言った。
「それに先生には…」
亜季は何かを言いかけて口ごもった。
その様子には明らかに逡巡の色があった。
「言いたくないことがあるなら構いません」
達郎は相手を気遣って言ったつもりだったが、亜季は首を振りながら顔をあげた。
「…月見さん、これは内密にしてもらえますか」
亜季の黒目がちな瞳が達郎を見つめる。
達郎は沈黙を誓った。


