「貴女がそう思っても、相手はそう思わないでしょう」

「でも本当に心あたりはないんです」

「過去に男性を振ったとか、そういう経験は?」

「男性とお付き合いしたことはありません」

「告白されたことも?」

「いけませんか?」

「それは…にわかには信じがたい話です」

達郎は、普段なら絶対に言わないようなことを口にした。

「それ、ほめてくれてるんですか」

亜季は首をかしげながら笑った。

「思ったことを言ったまでです」

達郎は再びホットチョコレートに口をつけた。

いつもより早いペースだと思った。

「月見さんて、思ってた感じと違うんですね」

笑顔を大きくしながら、亜季が言った。

その声は先ほどより幾分か弾んでいた。

「僕の事をどんな人間だと思ってたんですか」

いつもなら他人の評価など気にもならないが、今回は別だった。

「たくさんの事件を解決している探偵さんだと聞いてたので、学者みたいな人だと思ってました」