くちづけのその後で

西本君の予約時間が、刻一刻と迫って来る。


あたしはカルテをチェックしながら、何度も入口のドアに視線を向けた。


大丈夫……


何度そう言い聞かせても、苦手意識から芽生えた不安に負けてしまいそうになる。


何が不安なのかは、自分でもよくわからない。


早川さんに嫌悪感を抱いて、彼と重なる西本君に苦手意識を持って…。


理由は、本当にただそれだけ。


大丈夫……


これは仕事やん……


心の中で呟いた時、入口のドアが開いた。