くちづけのその後で

前を歩く颯斗は何も話さないし、あたしもずっと黙ったままで…


アパートに着くまで、あたし達は始終無言だった。


「付き合う前も、こんな感じやったな……」


「え?」


不意にポツリと言った颯斗に、あたしは小首を傾げた。


「ほら、初めて遊園地行った時♪」


「うん……」


小さく頷きながら、玄関の鍵を開けている手が少しだけ震えている事に気付いた。


「入ってもイイ?」


「うん……」


また小さく頷くと、颯斗は笑顔で靴を脱いだ。