くちづけのその後で

「立てる?」


手を差し出した颯斗に頷いて、彼の手を掴んで立ち上がった。


「ありがと……」


「いや、俺の方こそ……」


「西本さーん」


戸惑いを見せる颯斗の言葉を遮るように、さっきの看護師が彼を呼んだ。


「はい」


あたしは、診察室の方へ駆け寄って行く颯斗の後ろ姿を、呆然と見つめていた。


「朱莉ちゃん……?」


「あっ……あたし、帰りますね……。海斗も寝ちゃったんで……」


そう告げて、眠ったままの海斗を抱き上げた。