くちづけのその後で

「おはようございます……」


アパートの前に立っていた早川さんに軽く頭を下げ、控えめに言った。


「おはよう」


早川さんとは気まずくなって以来、話す機会が全く無くて…


彼と挨拶を交わすのも、久しぶりだった。


しかも、最近は颯斗の事で頭がいっぱいだったから、早川さんの事なんてすっかり忘れていた。


だけど…


無視出来るような雰囲気じゃない。


仕方なく、あたしはいつもの場所に自転車を停めた後、気まずさを隠しながら口を開いた。