くちづけのその後で

「海斗、抱っこ出来る?」


西本君に尋ねられて、あたしは小さく頷いた。


そして、海斗を起こさないようにそっと抱いた。


「あの……今日は、ほんまにありがと……」


西本君を家に入れるつもりは無いけど、このまま帰って貰うのも悪い気がして…


あたしは、次に続く言葉を中々言い出せなかった。


たった一言…。


『ばいばい』って言うだけで、イイのにな……


喉元までは出て来ている言葉なのに、何故かそれを声に出す事が出来なかった。