ひんやりとした空気に包まれた体が、一気に冷やされる。


全身が凍り付きそうなくらいの寒さに、思わず首を竦(スク)めてしまった。


ゆっくりと息を吐くと、目の前で白い空気がフワリと舞って消えた。


「寒……」


あたしは呟きながら傘を差して、歯科医院の入口の方に向かって歩いた。


「あれ……?」


ふと見ると、入口から少し離れた所に人が立っていて…


顔は傘に隠されていてよく見えなかったけど、何故か直感で“彼”だとわかってしまった。