「みどりちゃん、私もう寝るわ~」

姉はそう言って、ふらふらと自分の部屋に入って行った。

服も着替えずに、そのままベッドで寝てしまった。


私と村松さんは二人でダイニングに取り残されてしまった。


「村松さん、一体どういうことですか」

「いやあ。まさかみどりちゃんのお姉さんだったとはねえ」


村松さんはキャバクラで姉と知り合ったそうだ。

今日はアフターでカラオケに行ったら、姉が酔い潰れてしまって、家まで送ることになったのだと言う。

「驚いたよ。世間って狭いね」

「そうですね。びっくり」

リプトンのティーパックで煎れた紅茶を飲みながら、私と村松さんは台所のテーブルに向かい合って座っている。

もう3杯目だ。

お茶を1杯飲んだら帰るのかと思ったら、村松さんはすっかりくつろいでしまっている。

終電は、ずいぶん前に終わってしまった。

始発を待つとしたら、このまま、あと2時間は、ここにいるつもりなのかもしれない。


「そういえば、エリコと連絡取ってる?」

切り出してきたのは、村松さんのほうからだった。