ピンポン。

と、ドアフォンが鳴る。

「はーい」

私は慌ててエプロンを外してドアを開ける。

グレイのロングコートを着たヒトシが立っている。

「遅くなってすまない。これ、土産だ」

ヒトシはそう言って、紙袋を差し出した。


袋の中身は、店で余ったポテトだった。

ファーストフーズ2号店では、現在ウィンターポテトフェアを開催している。

12種類のフレーバーのポテトが話題で、雑誌にも取り上げられる程だ。

しかし、12種類もあれば、不人気のフレーバーがどうしても出てきてしまう。

ヒトシの考案したストロベリー味が、まさにそれだ。

少なめに作っても、どうしても余ってしまう。


「またストロベリー味ですね」

私が言うと、ヒトシは鼻の頭を掻いて照れ笑いをした。

私の考案したポテトチップ味のフライドポテトは、人気商品となっている。


私は甘酸っぱいピンク色のポテトをつまみながら、料理に最後の仕上げをすると、食卓に出した。


「おいしそうだな」

「得意料理の煮込みハンバーグです」


我ながら良い出来だった。
ヒトシは、美味しいと言って、一瞬のうちにたいらげてしまった。

ひ弱そうに見えるが、ヒトシは痩せの大食いで、よく食べる。