私は、自転車に乗り、ホテルペンギンを目指した。

実際に行くのは初めてだが、金のペンギンを目指せば、迷わずにたどり着くことが出来るだろう。


ホテル ペンギンは、遠くから見ると、黄金に光り輝いているように見えるが、近付くと、かなり年季の入った建物であることがわかる。

黄土色の壁は、ところどころはげ、植え込みの植物は枯れかけていた。

休憩 4500円~
宿泊 8500円~

丸ゴシック体の古めかしい文字で、そう書かれている。

哀愁漂うホテルだ。


受け付けは、従業員と客が、あまり顔を合わせないで済むような構造になっている。

小さな窓があって、そこでやりとりするようになっている。

その窓から中をのぞいてみると、受け付けに座っているのは年配の女性だということがわかる。

おばさんと、おばあさんの中間くらいの雰囲気だ。

「あの……」

と声をかけると、受付のおばちゃんは、鋭い目つきで私を睨んで言った。

「1人じゃ入れないよ!」

「す、すいません!あの、ちょっと聞きたいことがあるんですが」

「何だい?」

「この間、ここで、人が殺されましたよね」

「あ……ああ。そんなこともあったね」

「そのことについてお話を伺いたいんですが、よろしいですか」

「うーん。まあ、暇だし、良いよ。中入んな」

おばちゃんはそう言うと、スタッフオンリーと書かれた扉から、受け付けの中に入れてくれた。


「いや、ね」
おばちゃんは口元を手で押さえながら言った。

「アタシびっくりしちゃったんだけどね。ひどい有様だったのよ」

「死体、ですか?」

「そうよ。アタシが第一発見者なんだから」

おばちゃんは、相当の話好きらしかった。

聞いてもいないことまで、何でも話してくれた。