驚きのあまり、手が震える。


なぜ、ヨッチーの遺書に、私のテプラで作った文が組み込まれているのだろう。

答えは一つだ。

ヨッチーの遺書はテプラで作られたものだ。

微妙にゆがんだ行は、手作業でテープを貼っていったからだ。


「ヨッチーは遺書を店のテプラで打って、一枚の紙に張り合わせたんですね」

「その時に、気が動転していて、みどり君が打っておいた嫌がらせの文も一緒に貼ってしまったというわけか」

「そう考えられますね。でも何で紙に貼ったんでしょうね」

「見やすくするためだろう」

「じゃあ、もとのテプラはどこにいっちゃったんでしょうか」

「それは謎だな」

デザートのシャーベットを食べながら、ヒトシは言った。


一つ謎が解けて、また一つ謎が生まれた。

プラスマイナス0だ。

それでも、一歩前進したのは間違い無かった。



いつものように、割勘でお会計を済ませて外に出ると、雨は雪に変わっていた。