真っ白なシフォンのミニワンピに、黒い柄付きのタイツ。

ふかふかのファーのついたピンクのコートを羽織ると、私は夜の街に繰り出した。

様々なセンスの良い電飾に彩られ、きらめく街は、恋人たちを祝福しているかのようだった。


「おまたせ!」

と、待ち合わせ場所に陽気に現われたヒトシは、めずらしくスーツ姿だ。


人生初のクリスマスデート。

レストランに着いて、コートを脱ぐと、ヒトシは私のワンピースを見て、感嘆の声をあげた。

「今日はご馳走するよ」

「わ。ありがとうございます」

ヒトシがオーダーしたのは6千円のクリスマスコースだった。

「大奮発ですね」

「本当は、いつもこんな店に食べに来たいんだけどね」

ナイフでチキンを切りながら、ヒトシは言った。

「こんなおいしいもの食べたの生まれて初めてです」

私は本心からそう言った。

デザートは、可愛らしい小さなケーキだった。

「これ食べれるのかな」

と、私がかじってみた物は、金属で出来た小さなベルの形の飾りだった。

「それ、どう考えても食べられないだろ」

「てへへ」
私は照れ笑いをした。

可愛らしい金色のベル。

そのまま捨ててしまうのが勿体なくて、私はそれをハンカチで包んでバッグに入れた。


食事を終えると、ヒトシは飲み会があると言って、すぐにその場を去って行ってしまった。

ゆっくりイブの夜を過ごすつもりでいた私は、一人夜の街に取り残されてしまった。

淋しかった。

でも、忙しい中、私のために時間を空けて、レストランまで予約してくれたことに感謝しよう。

私はそう思うことにした。